◆横浜:はれ時々くもり
再議決でテロ対策の給油法案が可決して、次のテーマは、暫定税率と道路特定財源の問題。賛否拮抗していた給油法案とちがって、こちらは、暫定税率維持の与党案への賛成は、今のところ1/3くらいのようであり、民主党も、世論は味方とみて、攻勢を強めようとしている。しかしながら、どうにも議論がかみあっていない。
前回も書いたけれど、本来、この問題への対応の方向性は3つあったはずだ。
(1)は、与党案の通りの現状維持。暫定税率は維持して道路目的にしか使わない。
(2)は、暫定税率の収入は維持するけれど、一般財源化する。安倍内閣で一度は打ち出された方向である。
(3)は、民主党案の通りの暫定税率廃止。結果としてガソリンは安くなる可能性が高い。
本来、国論を二分して議論すべきは、(2)か(3)かの選択であるべきで、(1)は、論外のはずである。しかしながら、いつのまにか、(1)か(3)かの議論になってしまったため、論点がおかしくなってしまった。特に、与党の言い分は、(1)と(2)を意図的に混同させようという作戦で、(1)案を主張しながら、(2)の支持者もとりこもうとしているように見える。
○「ガソリン値下げは環境問題にマイナス」か?
昨日、町村官房長官が主張したこの意見が、(1)と(2)を混同させる作戦の象徴。地球環境が大きな問題になる時代に、ガソリン代を下げるのは時代に逆行との主張だが、それを言うなら、そのお金で道路を作ることこそ、時代に逆行している。暫定税率を恒久化して環境税として、省エネ技術のへの補助に使うのならわかるが、今の与党案では、民主党案に対して、環境に配慮しているとはまったく言えないはずだ。
○今回の民主党案はバラまきではない。
今回の、暫定税率廃止には、社民党、共産党も賛成している。与党案に対して、野党の足並みが揃うときというのは、減税か歳出の拡大、つまりバラマキ型の大きな政府型の政策であることが多く、責任がある与党はそれはできないが、野党は無責任に何でも言えるという傾向があり、小生なども賛成できないことが多い。しかし、今回の民主党案は、ガソリン税を下げた分は、道路を作れないのだから、収支の帳尻は合っている。だからこそ地方から反対の声も出るのだけれど、少なくとも無責任なバラマキではない。部分的には、小さな政府の方向の政策に共産党も賛成するのはめずらしいことである。
○パニックなど起きるわけない。
もうひとつ、与党サイドの主張として、時間切れでガソリンが下がると、小売店での売価への転嫁が混乱したり、直前に買い控えが起きて、混乱するというものがある。産経新聞などは、この点を主張して、与党案を擁護しているが、これもおかしい。消費税率だって上げるときは、駆け込み需要が発生する。何でも制度を変えるときは、多少の混乱は起きる。だから現状維持というのでは、すべての制度が変えられないはずである。ペイオフのときだって同じような主張でずいぶん延ばしたけれど、やってみたら何も起きなかった。
また、今回の日切れ法案には、その他にも、牛肉の関税なども含まれているから、牛肉の値段が上がってしまうという意見もあるが、それなら、法案をきちんと分離しておけばよいだけの話である。
○ガソリン値下げ隊だけでよいのか?
今のところ、民主党は、「ガソリン値下げ国会」、「ガソリン値下げ隊」など、25円下がることのみを前面に押し出している。わかりやすいのはたしかでこれだけで4割くらいの国民の支持は得られるだろうが、自民党の議論のすりかえにだまされないためにも、本丸は、道路特定財源の廃止であり、今回の25円値下げは、そのための第一歩であることをきちんと主張した方がよいのではないか?今のままだと、時間とともに、都市部では、ただ値下げしても仕方ないという声が強まり、地方では、やっぱり道路が欲しいという声が高まっていき、世論の支持が思ったほど広がらない可能性がある。
○今こそ安倍晋三くんの出番では?
4月まではまだ2ヶ月以上ある。与野党がきちんと議論を深めていけば、落としどころとして、(2)の案が浮上ししてくる可能性はあるのではないか?時間切れで25円下げただけでは根本的には何も解決しないし、それを2/3で再議決して、道路特定財源を温存するのは、世論が許さないだろう。
たとえば、10年ではなく、1年間だけの延長を認める、あるいは、1年間だけ税率を下げて、緊急景気対策としたうえで、一般財源化、環境税化を議論する。テロ対策とちがって、こちらは、足して2で割る余地がある。そして、足して2で割る案の方が長期的にはよさそうだ。そして、それは、安倍晋三と塩崎氏らお友達グループが主張していた案でもある。今こそ、安倍晋三くんの出番である。参議院で否決された後に、一般財源化を持ち出せば、国民的合意は得られるのではないか?公明党なども本音はそっちだろう。完全に終了したと思われていた氏だが、文藝春秋で手記も発表したことだし、ここは、復活のチャンスである。がむばっていただきたいと思う。
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