2024/3/11:あれから13年。NHKメルトダウン取材班『福島第一原発事故の「真実」 』を読む
◆横浜:はれ:3538歩:横浜の最高気温=13.8度
3・11から13年。かねがね気になっていた、NHKメルトダウン取材班の『福島第一原発事故の「真実」 』ようやくを読了。NHKスペシャルの取材記録をまとめたもので、かなりのボリュームで、実に読み応えがあった。
原発事故の記憶は、水素爆発した1号機の衝撃的な映像、菅総理の現地入りの混乱、ベントの可否、自衛隊ヘリの注水など断片的に覚えているけれど、当時は、地震当日はオフィスの1泊、その後、週末映像で見た津波の様々な被害、首都圏でも計画停電の混乱の中で、目の前のことに追われて、結局、原発事故は、何が一番の問題だったのか?大事故になったとはいえ、最悪の事態を免れたのは何がよかったのか?などいろいろわからないことが多かったのだけれど、この本を読んで、気になっていたことがいろいろ分かった。事故後の各種調査報告をベースにさらにNHK取材班が、関係者への取材の補強や、専門家の様々なシミュレーションなどを加えて、多角的に検証している。
1号機メルトダウン→建屋水素爆発。話題になった海水の注水は、途中で漏れて、ほとんど原子炉に入っていなかったという。そして、電源がなくても原子炉を冷却できるイソコンを稼働できていなかったことが大きな分かれ目になったよう。水素爆発では、放射能が直接出たわけではないけれど、1つだけ残った電源盤に電源車を繋げば、電源復旧が可能だった可能性があって、その作業が、あと少しまで来ていたところで、建屋の爆発で、瓦礫に埋もれて暗礁に乗り上げてしまう。ここから以降、負の連鎖が始まった。3号機メルトダウン→建屋水素爆発。そして、一番の危機だったのは、3/14-15頃の2号機だったよう。なぜかベントができず格納容器爆発の恐れがあった。しかしながら、爆発せずに溶けたところから放射性物質が漏れたけれど、心配したほど高温にならず爆発は免れた。そして、次は、アメリカがもっとも懸念した貯蔵プールの問題。ヘリで水をかけても焼石の水だった4号機。後の調査で、隣の貯蔵プールの水が流れ込んで、水は満たされていたことがわかった。
全電源喪失という想定外の状況下で、吉田所長以下の現場のメムバー、東京電力と関連企業、自衛隊や消防、そして政府。それぞれが知恵を出し合い、できることを必死にやっていたけれど、正直、運命に翻弄されていたような印象が強く、うまく行ったこともあり、うまくいかなかったこともたくさんあって、そして、いくつかの幸運にも恵まれて今があるということもわかった。
あの日を知る人、いや、知らない人にも、ひとりでも多くの人に読んでもらいたいと強く思うおすすめの一冊。最新調査結果を補足した文庫は、ドキュメント編と検証編の2分冊。まずは、ドキュメント編をおすすめ。
最近のコメント